「顔にシミができて気になる…」
シミは年齢を重ねるとともに増えるお肌の老化現象の一つです。
特に顔は、コミュニケーションで相手の視線がもっとも気になるところなので、シミなどのトラブルがあると人と会うのがストレスになることもあります。
しかし、一口にシミといっても、その原因は様々です。紫外線の影響が主な原因の一つですが、実は「シミの原因は女性と男性で異なる」部分もあります。
ここでは、この「顔のシミ」について、なぜできるのかという根本的な原因から、「男性」と「女性」それぞれの特有の要因、そして対処法について詳しく解説します。
1. 顔にできるシミとは?
シミとよばれるのは、うすい褐色から濃い褐色の色素斑のことです。これらは医学的に「老人性色素斑」、「雀卵斑(そばかす)」、「炎症後色素沈着」、「肝斑」などに分けられます(図1)。
シミは日光を浴びやすい顔や手の甲にできやすいのが特徴です。手が年齢を感じやすいといわれる理由の一つも、この紫外線の影響が出やすいからだと考えられます。
これらのシミの対処法として美白スキンケア製品が使用されますが、シミの中にも美白成分が効くものと効かないものがあるため、自分のシミの原因を知ることが大切です。

シミの根本的な原因「メラニン」とは?
顔にできるシミの根本的な原因は、肌の内部で「メラニン」が過剰につくられることです。その部分が褐色に見える現象がシミなのです。
メラニンは不要なものと思われがちですが、実は紫外線から肌を守る重要なはたらきをしています。
メラニンは本来「肌を守る」役割
紫外線の作用はたいへん強く、皮膚の細胞に大きなダメージを与えます。最悪の場合、細胞が死んだり、皮膚がんになったりすることもあります。
そこで皮膚は、紫外線をたくさん浴びるとメラニンをつくる働きを活発にします。夏に日焼けして肌が黒くなるのは、肌の細胞を守るためにメラニンがたくさんつくられるからです。秋から冬に紫外線が弱まれば、日焼けした肌も元にもどります。
なぜシミになるのか?
問題は、この肌を守るはたらきが正常にコントロールできなくなることです。
肌の一部で、紫外線を浴びていないのにメラニンをつくり続けるようになると、その部分だけ肌にメラニンが蓄積して「シミ」になります。肌全体の色が変化しても気になりにくいのですが、一部分が濃くなると目立つので気になるのです。
特に顔は、常に紫外線を浴びているため、ダメージを受けやすいところです。
メラニンが過剰に作られるメカニズム
顔にシミができるまでには、皮膚内部でメラニンをつくる以下のようなメカニズムに異常が起きています(図2)。
- 紫外線ダメージの蓄積:表皮角化細胞は日常的に紫外線によるダメージを受けており、日々炎症などが起こっています。
- 命令物質の放出:表皮角化細胞が紫外線を感知すると、メラニン生成を促すシグナルを放出します 。シミ部位では、紫外線を浴びなくてもシグナルを放出し続けています。
- メラニンの生成:メラノサイト(色素細胞)がそのシグナルを受けとると、メラニンをつくり始めます。メラノサイトの中にあるメラノソーム(袋状の細胞小器官)で、チロシンというアミノ酸がチロシナーゼという酵素によって酸化され、メラニンができあがります。シミ部位では、メラノサイトが過剰なメラニンをつくり続けています。
- メラニンの受け渡し:褐色のメラニンが詰まったメラノソームは、メラノサイトの樹状突起とよばれる触手のような突起の先端から放出され、表皮角化細胞に取り込まれます。シミ部位では、メラノサイトが樹状突起を増やして多くのメラノサームを表皮角化細胞に届けています(図3) 。
- 蓄積(シミ化):通常、メラニンはターンオーバーによって角層に向かって押しあげられ、最後は垢となってはがれ落ちます。シミ部位では、ターンオーバーが遅くなっており、メラニンが肌に残りやすくなっています。
シミ部位の肌では、これらの働きが正常にコントロールできなくなり、メラニンが過剰につくられて肌に蓄積しているのです。


【男女別】顔にできるシミの原因
顔にできるシミの原因は、紫外線という共通の要因に加え、「女性」特有のホルモンバランスや、「男性」特有のヒゲ剃りによる刺激など、多岐にわたります。
「シミの原因【男性】」:紫外線ダメージとヒゲ剃り
特に男性は女性に比べて少ない紫外線量で炎症を起こすことから、紫外線のダメージを受けやすいとされています。
さらに、男性特有のシミの原因として着目されているのが「ヒゲ剃り」です。男性は毎日のようにヒゲを剃るため、それが刺激になって弱い炎症を起こすことがあります。シミのある部位ではこの弱い炎症がメラニンの生成を促しているとの報告もあります。
また、最近では男性の美容意識も高まり、男性用の美白化粧品も数多く販売されており、男性のシミができるメカニズムに着目して開発された製品もあります。
「シミの原因【女性】」:ホルモンバランス
女性の顔のシミの原因として、紫外線だけでなく、女性ホルモンの影響が知られています。
代表的なものが、シミの一種である「肝斑(かんぱん)」です。これは妊娠やストレスなどによって女性ホルモンのバランスがくずれることが原因で現れることがあるシミです。
このように、女性と男性では、ライフスタイルや体質の違いから、顔にできるシミの原因が異なる場合があるのです。
シミの原因にアプローチする「美白」の仕組み
シミの対処に使われるスキンケア製品に含まれる美白成分は、メラニンがつくられる仕組みに対応して、主に以下の4種類に分類されます。
- メラニン生成を促す命令物質の抑制:表皮角化細胞からの「メラニンを作れ」というシグナルの放出を抑え、メラノサイトの活性化を防ぎます。
- チロシナーゼ活性の阻害:メラノサイト内でメラニンを作る酵素(チロシナーゼ)の働きを抑え、メラニンの生成自体を抑えます。
- メラニンの表皮角化細胞への受け渡しの阻害:作られたメラニンが表皮角化細胞に受け渡され、表皮の細胞内にたまることを防ぎます。
- メラニン排出促進:肌のターンオーバーを促すなどして、メラニンが角層と一緒にはがれ落ちるのを促す効果を期待するものです。
メラニンがつくられるメカニズムは女性も男性も同じなので、配合されている美白成分が同じこともありますが、女性や男性特有のライフスタイルや肌状態、好まれる使用感に合わせて製品が開発されています。
まとめ
シミはメラノサイトだけでなく、メラニンを受け取る表皮角化細胞の働きも影響しています。
なぜ、肌の「一部だけ」でメラニンが過剰につくられてシミができるのかについては、まだ解明されていないことが多くあります。
そのため、現在も以下のような研究が進められています。
- シミ部位とその周囲のシミがない部位での皮膚内部の構造の違い
- その構造の違いを引き起こす原因
- シミを薄くするため、表皮角化細胞内でメラニンを分解する働きなど
これらの研究でこころがけているのは、「メラニンは紫外線から肌を守るために必要なものである」ということです。メラニンをつくる働きを過剰に抑えてしまうと、白斑(はくはん)などの肌トラブルを生じたり、紫外線に対する防御が弱くなって皮膚がんのリスクが高まったりする可能性もあります。
シミケアにおいて大切なのは、あくまでも「本来の肌の働きを取り戻すこと」なのです。
監修医師
医療法人社団明海皮ふ科理事長 皮膚科専門医 本橋尚子先生
